イラク医療支援状況

イラクにこだわり続けている写真家の佐藤好美さんから、イラク
の医療支援状況についてご報告をいただきました。

 来月の主権委譲など、絵に描いた餅でさえありません。

 アブグレイブ刑務所の状況は衝撃的でしたが、ブッシュやブレア
が刑務所の収容者だけに謝って済むことではありません。イラク
病院では、さらに衝撃的な状況が慢性的に続いています。薬がない、
ルートもない、保険省も機能していない。占領軍への攻撃は報道さ
れても、ひとりひとりのイラク人の死は、私たちの耳に入ってこな
いのです。

 「平和にならなければ薬を届ける事が出来ない、命を救う事が出
来ない」以上、占領軍自体を撤退させることしか、イラクの人の悲
しみや悔しさに応える術はありません。



(以下転載、再転送の場合はご連絡下さい)

 こんばんは!


 先日、バグダッド、セントラル病院訪問の際お世話になりました
ダッハム先生が名古屋の小野まりこ法律事務所の招きで来日、名古
屋大学で研修を受けているという情報が入りました。日本人拘束後、
以前にもまして医薬支援が難しくなっており、イラク国内の様子、
病院の薬の問題もあり早速、名古屋に向かい小野まりこ法律事務所
でダッハム先生にお会いしお話を伺って来ました。状況は想像以上
です。

 * 現在、抗ガン剤以外の薬は大方、イラク国内で調達出来る。
しかし病院の薬は保健省管轄の為、薬不足だからと言って個々の病
院独自で薬を入手する事は出来ない。現在、保健省の機能は麻痺し
ている。(残念ながら保健省から各病院への薬の分配は極端に少な
い為、消毒綿のはてまで全て不足している。)

 * 慢性的薬不足、高価な薬は患者の家族が調達しなければなら
ず、全財産売り飛ばし、借金などの方法で薬を購入しなければなら
ない。貧しい患者は薬を手に入れる事が出来ず命を落とす事になる。

 * 支援として持ち込んだ薬は保健省が検査し許可が出て始めて
使用されていたが、現在、保健省が機能を果たしていない為、検査
する事が出来ず、薬を持ち込んでも(命に関わる為)安易に薬を使
用する事が出来ず受け取り拒否をする。

 * 一部の病院ではNGOとの信頼関係が築かれているため検査
なしで薬を受け取る場合があるがこれは限られたほんの一部の病院
のみになっている。

 * 個人、またはNGOと医師の間で信頼関係を築き情報が入れ
ば(私が訪れたような大きな大学病院)抗ガン剤等の治療薬が手に
入る事もあったが現在は難しい。

 * 抗ガン剤等の治療薬はサイクルが決まっている為、途中で薬
が切れ治療が出来ない場合や治療に必要な薬が揃わない場合、治療
の効果がなく、決められた薬が手に入らない場合、病状が悪化、命
を失う事になる(現実には失われている。)

 * 断続的な停電になる為、冷蔵庫の中に保管を必要とする抗ガ
ン剤等は病院と打ち合わせをし運び込み保管場所を確保出来なけれ
ば無駄になる。

 * アンマン〜バグダッド間を陸路で医薬品を運ぶ場合(バグダ
ッド街道、別名アリババ街道)たとえ信頼の置けるイラク人医師に
同行をお願いしても治安悪化、テロ等危険があり薬を運ぶのは難し
く命の保障も無い。それでも「医薬品を運びたい」と言われる場合、
「命に掛けて日本人を守る」とダッハム先生の最も信頼する医師の
言葉がありましたが最悪の場合、巻き添えでイラク人医師が命を失
う事を考えると医師の好意に甘える事は難しい。

* アンマン〜バグダッド間、空路で医薬品を運ぶ事は現在まで一
度も無い。たとえ医薬品を積み込んだとしてもバグダッド空港で
(米軍管轄)荷物が着いていないと言えばそれまで。責任追及は出
来ない為、運を天に任せるしか無い。

 * ダッハム先生の仲間の医師を信頼しヨルダンに送金しヨルダ
ンからバグダッドに送金という方法で医薬品支援が一番望ましい。

 * ヨルダンよりバグダッドで購入した方が医薬品はかなり安い。
(ただし危険な状況下で何処から医薬品を仕入れ店頭で販売される
ているのか不明)

 * どうしてもイラクに入国し自分の手で医薬品を購入、届けた
いと希望する場合、ダッハム医師からイラク人医師へ連絡、バグダ
ッドの薬局に同行して下さるとの事。しかしあえて今、この危険な
時期に入るより送金の方法を取って欲しい!との言葉がありました。

 以上のようにセントラル病院のダッハム医師の話をまとめました。
まさにひどい状況です。イラクで病気になれば死を意味するかもし
れません。医薬品を「自分の手で!」と入国を希望する方がいらっ
しゃるようですが本人はもとより手助けをして下さるイラク人医師
をも危険にさらす事になります。旅費、滞在費、命の危険を考えれ
ば果たして強引な入国はどの程度、イラクの人々の為になるのでし
ょうか?正直、分かりません。
 私自身も医療支援を訴えNGOの方をご紹介しておりましたがN
GO、個人での医療支援の限界はとうに超えているように思われま
す。わずかに残された医薬品を運ぶルートも今はありません。安全
に確実に医薬品を届けたいと願う、日本〜ヨルダン〜バグダッド
の送金で薬の調達をイラク人医師に直接お願いし病院に運び込む方
法が一番良いかもしれません。現在、イラクに残っている医師は皆、
野戦病院と化した中で命がけで人々の治療にあたっているとのお話
でした。送金方法等は名古屋の小野まりこ法律事務所のやまがたさ
んに(TEL: 052−852−1336)お問い合わせ頂けます
か?ただ、問題は抗ガン剤などです。バグダッドで手に入れる事は
全く不可能です。陸路も空路も駄目となると届ける方法が思い当た
りません。罪の無い多くのイラク人が薬が無い為に大切な命を落と
しています。平和にならなければ薬を届ける事が出来ない、命を救
う事が出来ないのが現実のようです。
 今、この程度の情報しか提供出来ず申し訳なく思います。厳しい
状況におかれ苦しむ大勢の人々の事を考えると一刻も早く平和にな
らなければと気ばかりが焦ります。
 私達に今、何が出来るのでしょうか?

 それでは宜しくお願い致します。


 佐藤 好美

(転載おわり)